What's HANDLER?

HANDLER【ハンドラー】は刺繍商品を作り販売しています。

一言で「刺繍」と言いましても様々な作り方や技法があります。
手刺繍という物はいわゆる「手芸」であり、ミシンなどを使わない手法です。 HANDLERでは刺繍ミシンをあやつり作業をするもので、「手芸」と同じハンドメイド ではありますが、手法が違う刺繍です。

HANDLERのHANDLEは取っ手などのハンドルの意味を持ちます。
皆さんが普段目にするミシンの多くは、俗に本縫いミシン【ほんぬいミシン】と呼ばれる もので、主に縫製に使われるものです。刺繍ミシンはその本縫いミシンの派生型で、もとは 縫製をするミシンでした。
そのミシンを改造し上下しか動かなかったステッチを、あらゆる方向へ縫うことができるように、 ハンドルを取り付け改造しました。 HANDLERとはハンドルのついた特殊ミシンを扱う人を指しています。

そんなHANDLERが取り扱うミシンは、古いもので明治時代のころ生産されたミシンを使い刺繍をしています。

  • なぜそんな古いミシンを使うのか?
  • なぜもっと新しいミシンで効率よく作らないのか?

それには理由があるのです。 手作業で作られた刺繍というのは、独特な味【アジ】が生まれ、今ではVintage【ヴィンテージ】 刺繍と扱われて、大変重宝されています。 しかし今ではVintageと呼ばれる50年、60年前(年代を特定する物ではありません)に使われていた ミシンは、やがて職人の手を離れ、作業は人からコンピューターミシン【ジャガードミシン】へ移行してゆきます。

戦後(第二次世界大戦以後)から徐々に、職人とミシンによる刺繍工業生産は、柄データをパンチングカード 【3cm幅ほどの紙製のテープに、丸い穴を抜き光を透過して柄データを読み込ませる】に記録し刺繍技術も 人の手を介したものより、精巧で生産時間の短縮も格段に向上しました。

コンピューターミシンは戦後の好景気を追い風に、次々に進化してゆきます。 一度に生産される刺繍は1枚から10枚、20枚と1機で職人20人分の生産量を生み出しました。 もちろんそれは、スーパースピードで出来上がります。 刺繍糸の色替えも手作業で行っていたものがすべて自動化され、あっという間に刺繍工業生産の主流となりました。 それは手作業と違って仕上がり品質も向上し、これまで職人が手間暇をかけて作った刺繍は、やがて クォリティーの低い商品と扱われ、衰退してゆきました。

そこでHANDLERがとても憂えたのは、職人の減少に伴って今重宝されているVintage刺繍が、70年代以降はほぼ生産されて いないことでした。(Vintage刺繍の空白時代と考えています) つまり今までは職人が一枚一枚、長年培った技術を屈指して作った刺繍をVintageとして重宝した物が、 これからはジャガードミシンで数百、数千、数万と生産された刺繍を、今後はVintage刺繍として 扱われることが、とても虚しく思えてしまった事です……

HANDLERが目指す物づくりは、職人による刺繍が再興されることではなく、 人から生まれたもの特有の味を大事にするお客様が、今後もまた手に取っていただけるように、 事業活動を続けています。

これはジャガードミシンで生産された刺繍を否定する物ではありません。 なぜならそれぞれの手法の違いはお客様の意向によってチョイスされるべきものであると考えるからです。

HANDLERは「本物の50年後のVintage刺繍」と大事にされる物づくりを大事にしてゆきたいと考えております。

HANDLER ナカジマユウイチ